毎週日曜日20時からNHK総合(18時からBSプレミアム)他にて放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
2017年6月11日、第23回が放送されました。今回の副題は「盗賊は二度仏を盗む」。元ネタはおそらく、イギリスの人気スパイ映画・007シリーズの5作目にして日本が舞台となった「007は二度死ぬ」(1967年)でしょうか。
前回22話で、龍雲丸(柳楽優弥さん)率いる盗賊団と、彼らに不信感を抱く井伊の百姓たちを見事に打ち解けさせた井伊直虎(柴咲コウさん)。一時はこれ限りかと思われた龍雲丸らとの関係も再び固く結ばれ、全てが丸く収まったかに思われました。しかし再び近隣の領主・近藤康用(橋本じゅんさん)が井伊を訪れたことにより、またも騒動が巻き起こります。
前回の第22回「虎と龍」を見逃した方は、是非、こちらをご覧下さい。
それでは、第23回のあらすじと感想です。
仏が盗まれる・・・再び向けられた疑惑
直虎たちが百姓や盗賊たちを交えた宴に興じている頃、筆頭家老の小野但馬守政次(高橋一生さん)の元に、井伊の近隣の領主・近藤康用(橋本じゅんさん)がやってきました。彼は、近藤領の菩提寺にある本尊(仏像)が何物かに盗まれたことを告げます。
さらに、井伊でかつて木を盗んだ賊を匿っているという噂を耳にし、ひそかに人を入れて確かめたところ間違いないという確信まで得たと言います。近藤の疑いの目が再び井伊に、そして盗賊団に向けられているのは明らかでした。
これに対して政次は、珍しく慌てたように咳き込み、木を切るために人を雇ったのは知っているが、賊の顔を見たことがないため自分は雇ったのがその賊だとは知らなかった、と白を切ります。その上「すぐに賊の身柄を引き渡すようにする」とまで言ってしまいました。またもや政次は、直虎と対峙することになるのでしょうか。
盗賊団を逃がせ!
その翌日、家臣の奥山六左衛門(田中美央さん)や瀬戸方久(ムロツヨシさん)から、自分が宴でしきりに龍雲丸に絡んでいたことを聞いた直虎。どうやら二日酔いで記憶がないようで、ショックを受けています。彼女が気恥ずかしさに赤面しているところに、近藤が面会に来たとの知らせが入ります。
近藤から本尊盗難の件を聞いた直虎は、「雇っているのはあの時の賊ではない」と一度は嘘を言いますが、近藤との応酬で勢いのあまり「もうあの者たちは盗みはせぬ!」とうっかり口を滑らせてしまいます。
猪突猛進で言いたいことをはっきり言えるのは直虎の良いところですが、この場ではそれが裏目に出てしまいました。怒る近藤に六左衛門が「自分が進言し、殿が認めたこと」ととっさに庇いますが、もう近藤は聞き入れません。と、政次が「ここは賊を引き渡すのがよろしいかと」と直虎に進言します。政次に何か考えがあるのでしょうか。それを図りかねながらも、直虎は引渡しに承諾しました。
近藤らが政次に連れられ盗賊団のいる作業場に向かうのを見届けるや否や、直虎は中野直之(矢本悠馬さん)に裏道から回って龍雲丸らに逃げるように伝えるよう指示しました。彼らを近藤の手から逃すつもりなのです。かくして直之は盗賊団の元へ疾走します。一方の近藤らも着々と作業場へ近づいていました。直虎は「逃げてくれ」とただ祈るしかありません。
直之が作業場に着くと、既に近藤らが到着していました。間に合わなかったかと思いきや、どうやらもぬけの殻。近藤たちは血眼になって探していますが、龍雲丸らの姿は既にありませんでした。戻った直之からこれを聞いて直虎は安堵します。
近藤領に仏像を・・・直虎の覚悟
龍雲丸らが井伊からいなくなって数日。彼らが戻ってくる気配はありませんでした。もう井伊には戻って来ないかもしれないと思いながらも、直虎は「逃げられただけでも上々とせねば」と複雑な表情です。
南渓和尚(小林薫さん)が、近藤の盗まれた本尊を寄進してはどうか、と直虎に提案しました。「龍雲丸たちは盗んでいない。言いがかりなのに、こちらに寄進する理由はない」と憤慨する直虎ですが、和尚は、近藤に黙って盗賊団を匿っていたのは事実なのだから、それを本尊を送ってうやむやにすればよいと言います。
そして「いたずらに敵を増やしてはならぬ。頭を下げるのも、当主としての役目」と直虎を諭しました。この件を六左衛門から聞いた政次も、なにか思うところがある様子です。
近藤と改めて面会し、本尊寄進の話を持ちかける直虎と和尚。ここぞとばかりに直虎へ挑発的な皮肉ばかりぶつける近藤に、直虎は自分の至らなさでこのようなことになってしまってすまなかった、と頭を下げます。彼女のことですから、近藤にさぞ腹が立っていたに違いありません。しかし先の和尚の言葉を胸に、冷静に対応したその姿は、当主としての役目を果たそうとする思いが見えるシーンでした。
仏像が戻ってきた!?
和尚の進言で、直虎たちは菩提寺の本尊の大きさを測るため、実際に本尊が置かれた場所へやってきました。ところが、そこには既に仏像が置かれています。本尊の代わりの仏像かと思いきや、その作者は盗まれた本尊の作者と同じ人物。どうやら本尊そのもののようなのです。
驚きながらもあれこれと言い訳をつける近藤と菩提寺の住職に、和尚は「もしや・・・本尊が自ら戻ってこられたのじゃな」と笑います。本尊が戻ってきたという事は「もうここで事を収めなさい。すべてお見通しだという仏の御心ではないか」と続けました。
その和尚の顔は有無を言わせない圧力を感じる表情。近藤も黙りこくるしかありません。こうして、最後は改めて和尚と直虎が本尊へお経をあげたことで、事態は収拾したのです。
本尊の真相
近藤領からの帰り道、和尚は直虎へ事の真相を明かしました。
ある晩、和尚のもとへ龍雲丸がやってきたというのです。本尊のことを和尚が伝えると、龍雲丸は「盗んでいない。朝から晩まで働いていたのだから、盗みに行く暇もなかった」と言います。とすれば、やはり龍雲丸ら盗賊団を捕らえるための、近藤の言いがかりと考えた方が良さそうです。と、龍雲丸は「本尊を隠すとしたらどこか」と和尚に尋ねます。
和尚は、本尊は触れるのも恐れ多いものだから、置いたままにしているだろうと答えます。そこで龍雲丸はあるアイデアを思いつきます。直虎と和尚が菩提寺を訪ねるとなれば、さすがに本尊はどこかに隠されるはず。その場所をひそかに探り、龍雲丸が隙を見て再び元の場所へ戻すというものでした。幾度も悩む直虎にアイデアを与えていただけあり、龍雲丸はやはりなかなか頭の切れる男です。
ここまで驚きながら聞いていた直虎ですが、やはりもう井伊には帰ってこないだろうと肩を落としていると、そこにいつの間にやら龍雲丸が現れました。さらに驚く直虎に彼は、井伊に戻らなければ金を受け取れないと笑います。
そして「自分たちは盗んでいないし、尼小僧様も俺たちはやっていないと言ってくれたという。ならばやっていないことを証明しなければ、尼小僧様が嘘を付いたことになってしまう」と言いました。龍雲丸も、直虎を助けたかったのですね。この言葉に、直虎は目に涙を浮かべます。直虎と龍雲丸の絆が目に見えるような、とても素敵なシーンでした。
盗賊団を家来に?
その後、盗賊団の面々が次々と井伊に戻ってきました。
直虎も家臣たちも一様に喜んでいます。すると直之が、盗賊団を井伊で召抱えてはどうか、と提案しました。それは酔った勢いで言ってしまったことだし、そもそも彼らに怒っていたではないかと直虎が言うと、付き合ってみれば悪い輩ではないし、腕も立つ、とまんざらでもない様子です。
確かに散々盗賊団に対して反発し、噛み付いていた頃の直之を思い返すと、可笑しくなってしまうくらいの気持ちの変わりようです。と、六左衛門が盗賊団たちから聞いたある話を直虎に告げます。
近藤らが盗賊団を捕らえようとした日、彼らのもとへ、六左衛門の妹で政次の義妹・なつ(山口沙弥加さん)と思われる人物が「追っ手が来るから早く逃げるように」と告げてきたというのです。もしかして、政次は身柄を引き渡す振りをして、なつに彼らの元へ行くよう指示をしたのではないか、と。
明かされる政次の策
果たしてその通り、政次は近藤が訪れた時、なつに「自分がおかしな咳をしたら、盗賊団に逃げるよう伝えに行くように」と言っていました。さすが政次、今回もまるで囲碁や将棋のように何手も先を読んだ策です。かくして、近藤が本尊盗難の話を始めた時の、政次の慌てたような咳を聞いて、なつはいち早く盗賊団の元へ駆け込んだのでした。
直虎は政次を呼び出します。そして盗賊団が井伊へ戻ってきたこと、彼らを家来として召抱える話が出ていることを告げました。さらに、なつを使って彼らを逃がしたのもそなただろう、と尋ねました。政次は殿がまた大騒ぎするだろうからあくまでそれを避けるために、と言います。
また、家来にすることはどう思うかと直虎に問われるも「お好きなようになさればよい」と自分の意見を言おうとしない政次に、直虎は「誰よりも井伊のことを思っているそなたの考えに従いたい」と言います。すると政次は、反対はしない、と言いました。
そして「井伊のために彼らを使うことは大いに結構だが、彼らのために井伊を使うことのないよう。そうでなければ自分は殿を排することを考えなければならないかもしれない」と続けました。直虎は、家老としての政次の本音に頷きます。
龍雲丸の答えは・・・
とうとう直虎は、龍雲丸へ「井伊に仕える気はないか」と持ちかけました。もちろん盗賊団全員一緒に、という条件です。
その場では言葉を濁す龍雲丸ですが、盗賊団の面々と話し合いをすると、皆、一様に好意的な意見です。モグラ(マキタスポーツさん)から「お家が再興できるかもしれない」と声を掛けられた龍雲丸は、幼い頃を思い出していました。武家出身は本当のようで、何やら凄惨な過去を抱えているようです。
六左衛門から、盗賊団の反応が好感触であることを聞き、直虎は喜びます。この時点で、ほぼ確定に思われました。そして、彼らに木の切り出しの報酬を渡す日。ここで、家臣になるか否かの返事を聞くことになっていました。
一同に介す前、直虎は、何やら着物をいつもより可愛らしいものに準備して上機嫌です。これを見ていた高瀬(高橋ひかるさん)は「母上様が乙女のようじゃ」と笑います。確かに、いつもよりもお洒落をしてニコニコな直虎の姿は、デートに行く前の女性のようです。
屋敷に龍雲丸らがやってきました。報酬の受け渡しをした後、直虎は家臣の話の返事を聞きます。ところが誰もが同じ返事を期待していた中、龍雲丸は一言「お断りします」と言ったのです。
直虎や井伊家の人々はもちろん、盗賊団の面々も予想だにしていない展開に唖然とします。続けて龍雲丸は手下たちに「お前たちが家臣になるのは構わないが、俺はやっぱり武家は向いていない」と飄々と言いました。
慌てて断る訳を問う直虎に、彼は「空に雲があったから」とぽつりと告げます。直虎の屋敷へ向かう最中、龍の形をした雲、龍雲を見ていたのです。直虎はますます困惑するばかりです。
龍雲丸の手のひら返し!織田信長、現る。
「おんな城主 直虎」第23回のあらすじと感想をお伝えしました。
あれほど、とんとん拍子で進んでいたはずの盗賊団を家臣にする話でしたが、龍雲丸は気まぐれとも言える理由で断ってしまいました。
彼らしいといえば彼らしい理由のような気もしますが、ではこれで井伊を去ってしまうのでしょうか。
そして次回は、いよいよ言わずと知れた三英傑のひとり、織田信長が登場するようです。演じるのは市川海老蔵さん。
一体どんな展開となるのでしょうか。来週も見逃せません。