毎週日曜日20時からNHK総合(18時からBSプレミアム)他にて、放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
2017年6月4日放送の第22回の副題は「虎と龍」です。直虎の「虎」と龍雲丸の「龍」かのことなんでしょう。2005年のTBSドラマ、「タイガー&ドラゴン」が元ネタなんでしょうね。
前回21話「ぬしの名は」で、盗人の男(柳楽優弥さん)と、誘拐という思わぬ形で三度再会した井伊直虎(柴咲コウさん)。男の名は龍雲丸。その正体は荒くれ者が集まる盗賊団の頭領でした。井伊で材木を商うことにした直虎は、逆転の発想とそこに秘めた領主としての想いで、龍雲丸ら盗賊団を材木の木を切るための人手として雇うことに成功しました。しかし、これで一件落着とはいかないようで・・・。
それでは、第22話のあらすじと感想です。
前回の第21回「ぬしの名は」を見逃した方は、是非、こちらをご覧下さい。
龍雲丸VS政次
盗賊団を井伊に迎えたものの、その頭領・龍雲丸がまさしくかつて井伊で捕らえながらも逃げられた盗人であり、前回で直虎を誘拐した張本人であることは、たちまち家臣の中野直之(矢本悠馬さん)や奥山六左衛門(田中美央さん)にも知られるところとなりました。
そんな輩を引き込むなど正気ではないと憤慨する直之に、直虎は「屈強な家来衆ができるかもしれぬ」と食い下がります。しかし何よりも心配の種は、「盗人は死罪にすべし」と強く進言していた筆頭家老の小野但馬守政次(高橋一生さん)がこれを知ったときに認めるかどうか、ということでした。
直虎から盗賊団のことを聞いた政次は、まずは働く彼らの様子を見たいと作業場へ向かいます。作業場では、男たちが力仕事もものともせず、順調に働いていました。
と、龍雲丸と対面した政次は「(木の盗みを働いた)近藤領には近づかないほうがいい。井伊はうぬらを匿ってやっている。何かあればいつでも差し出せる」と脅すように囁きました。しかし龍雲丸も「こちらもいつでも姿を消せる」と返します。政次としては、商いに力を貸してもらう以上、井伊に留まるのを認めはするけれど、やはり歓迎するとまではいかないというスタンスの様です。
事は前に進んではいるものの、どこか暗雲が立ち込めているのが分かるシーンで、直虎の心中と同じように、早くもハラハラさせられました。
龍雲丸のバックハグ!
ある日直虎は、作業場の盗賊たちに運ぶ食糧の準備をしていました。
と、そこに賊を見てみたいから変装して付いて行くという高瀬(高橋ひかるさん)が現れます。その出で立ちはまさしく百姓の娘。とても素朴で可愛らしいです。元が百姓育ちとはいえ、さまになっているその姿に直虎もおかしげに目を見張ります。
さて、盗賊たちがいる山へ向かうと、まさに大木の切り出しの真っ最中。直虎がその手際の良さと迫力に見入っていると、龍雲丸が切り出しをやってみないか、と彼女を誘いました。意気揚々とそれに応じる直虎ですが、持ち慣れていないのこぎりに四苦八苦。
と、龍雲丸が後ろから直虎の手を添えてきました。後ろから抱きしめられるような、いわゆるバックハグ。突然の出来事に直虎はパニック状態です。そして観ている私もパニック状態でした。予告編でも少し登場していたシーンとはいえ、よもやこのような胸キュンが再び登場しようとは、なかなか想像し得なかった方も多いのではないでしょうか?
そして思い出されるのは、まだ次郎法師だった直虎が、駿府へ向かったまま帰らぬ人となった井伊直親(三浦春馬さん)に抱きすくめられたシーン。直虎にとって、これが最初で最後のはずでした。
慌てて龍雲丸の手を放した直虎が、脱兎のごとくその場を走り去って「煩悩め、滅したと思ったが・・・」と苦しそうにつぶやく様子はひとりの「おなご」に戻ったようで、おかしくも可愛らしいなと思いました。
それにしても龍雲丸は、一体直虎に何を想っているのでしょう。
龍雲丸の謎、そして井伊に博打場が?
直虎は、盗賊団のひとり・モグラ(マキタスポーツさん)から、龍雲丸がどうやら元は武家の生まれであるらしいことを聞き、驚きます。
盗賊団で唯一、文字が書けるほどの教養を持ち、直虎を誘拐した時の身代金を求める手紙を書いたのも龍雲丸だというのです。武家出身である彼が、なぜ盗賊として生き、なぜ直虎に「武家なんて由緒正しい大泥棒だ」とまで言ってしまう男になってしまったのでしょうか。直虎は思いに耽ります。
もしや直親のように追われる身になりながら故郷に帰れなかった者なのではないか、そして今、直親が自分の代わりに井伊を守るために寄こしてくれたのではないか・・・。
と、ここまで考えたところで直親の妻・しの(貫地谷しほりさん)の、高瀬が現れた時の「我らは見事にすけこまされたのでしょう!」という言葉に我に帰るのでした。あの二枚舌の直親のことだからそこまで考えているはずはない、といったところでしょうか。
ある時、井伊の屋敷に百姓の女房たちがやってきました。「気賀からきた連中が博打場を作っていて、そこに旦那が入り浸りになった上に作物の種まで売ってしまって困っている」というのです。気賀からきた連中、言わずもがな盗賊団のことです。
直之が中心となり博打場を押さえ、直虎が龍雲丸に「博打は控えてもらいたい」と念を押して事は収まったかに思えました。ところがその後も、「酒を盗まれた」と瀬戸村の八助(山中崇さん)が、祝田村の富蔵(木本武広さん)は「娘がゴクウ(前田航其さん)に追い掛け回され襲われそうになった」などと、盗賊団への苦情が次から次へと直虎の元に舞い込んできて大騒ぎです。
どちらも盗賊団の男たちは盗んでいないし、襲ってもいないと否定します。そもそも百姓が嘘を付いているかもしれないのに、なぜ真っ先に自分たちを疑うのかと噛み付く盗賊団のひとり・カジ(吉田健悟さん)に、直之は百姓より賊を先に疑うのが普通だと応酬し、一触即発に。
龍雲丸も直虎に「こっちは呼ばれて来ているのにこのような扱いを受けなければいけないのか。今日までの取り分さえもらえればすぐにいなくなるからそちらで話し合って欲しい」と告げました。
盗賊団との決別・・・龍雲丸の本心
かくして、直虎と家臣たちは話し合いを始めます。
方久が「盛り場を作っておとなしく遊んでもらえばよい。こちらの稼ぎにもなる」と言えば、直之は「なぜ出稼ぎにきた者のために盛り場を作らなければならぬのか」と反対し、なかなか意見はまとまりません。
と、政次が「盗賊団が出て行くまでに木を切る技を盗めばよい」と提案します。次から盗賊団に頼む必要もないし、冬場の畑仕事がない百姓たちの時間を使える、と。
しかし直虎は、それでは彼らを使い捨てるようで気が進まない様子です。彼女は龍雲丸たちと、これ限りではなく、今後につながるような役目を通じて助け合う間柄になりたいと考えていました。いろいろな知恵を持つ彼らとの関係を保つことは、何より井伊の民のためになるはずだと。
しかしこの訴えにも、その井伊の民が苦情を申していること、龍雲丸が金さえもらえればすぐに井伊を出て行くと言っていることを引き合いに「つながりを保ちたいと思っているのは殿だけではないか」と返す政次に、直虎は返す言葉が見つかりません。
とうとう、直虎は龍雲丸らに出て行ってもらう決意をしました。彼女がそれを伝えに彼らの元へ向かうと、何やら揉め事が起きている様子です。
材木を盗もうとしていた仲間を、龍雲丸が叱り飛ばしていたのでした。物陰に隠れて様子を伺う直虎と六左衛門。と、カジが龍雲丸に言いました。「おれが井伊の奴等なんか信じていいのかと言った時、頭(かしら)は『あの尼小僧はくそ侍とは違う。あいつは俺たちのことを人として考えてくれている』と言った。それなのに話が違う」と。
材木の話を笑顔で引き受けてくれた龍雲丸の本心に、隠れ聞いていた直虎も複雑な表情です。力なく「もうこんな話は受けない」と答える龍雲丸の姿も、とても切なく感じました。
と、隠れていた直虎と六左衛門の背後から何やら物音がしました。どうやらイノシシの鳴き声のようですが、小心者の六左衛門は直虎にしがみつくばかり。「恐れるな」と六左衛門をなだめた直虎ですが、突然はっとした表情になります。またもや何か思いついたようです。
直虎の策・・・「恐れを取り払う」ということ
直虎は、龍雲丸たちに食事を振舞うと言い出しました。
彼女は、百姓と盗賊団のあいだにこうもいざこざが起こるのは、イノシシの時の様に恐れがあるからではないかと考えたのです。お互いがお互いを遠くから見ているから、恐れが生まれ、思い違いが生まれる。ならば互いに歩み寄ってみれば、それも解けるのではないだろうか。自分が連れてきた者たちだから、自分にこの思い違いを解かせて欲しい、と。もし思い違いなどなかったらどうするのか、と問う政次に彼女は「その時はそなたたちの言うとおりにする」と覚悟を見せます。
イノシシ鍋を振舞うことにした直虎の命で、モグラとカジ、瀬戸村の百姓たちが一緒にイノシシ狩りをすることになりました。一緒に行動しなければならないことに、互いに文句を言い合いながらも、それぞれのイノシシの狩り方を話し合います。
しかし、イノシシを待っていた直虎の屋敷に戻ってきたのは怪我をした百姓・角太郎(前原滉さん)と、彼を介抱するモグラたちでした。なんとイノシシを採るために掘った穴に、角太郎が落ちてしまったというのです。心配する直虎ですが、百姓とモグラたちは一様に楽しそうな笑顔。最初のいがみ合いはどこへやら、すっかり彼らは打ち解けたようです。
イノシシ鍋とはならなかったものの、百姓たちと盗賊団たちが一緒に鍋を味わっている中、さらに意外なことが起こります。
カジに疑いが向けられていた八助の酒を盗んだのは自分だと祝田村の福蔵(木下隆行さん)が白状し、富蔵の娘を追いかけていたゴクウは、ただ彼女が落としたお守りを届けようとしていただけだということが分かったのです。果たして直虎の読みどおり、すべてはお互いの恐れや思い違いから来ていた誤解だったのでした。
後からやってきた龍雲丸もこの成り行きを見て、「尼小僧様は、何だかんだと人を取り込んでしまう不思議なお方だ」と南渓和尚(小林薫さん)に語ります。そして、直虎に役目を続けさせて欲しいと告げました。もちろん直虎は大喜びです。
龍雲丸の言葉通り、直虎は本当に不思議な魅力を持った女性だと感じます。そして今回の鍋を振舞うことも然り、機転を利かせるのが上手です。あんなに対立していた百姓たちと盗賊団たちを、これほど楽しく酒を酌み交わすまでに距離を縮めてしまうのですから。これはきっと当主になったから、出家し修行していたからというものではなく、ひとえに彼女のもって生まれた才能であり人柄なのだろうな、とつくづく感じます。そしてその根底にあるのはいつも「優しさ」であるとも思いました。
近づいた距離、そして疑惑再び・・・
さて、宴は夜になっても続いていました。すっかり酔っ払った直虎は、どうやら酒癖があまりよくないようで、しきりに龍雲丸に絡んでいます。その様子にさすがの龍雲丸も困惑気味。「どこかに子でもおるのであろう!?」「このまま井伊におれ!」と言ってしまうあたりは、やはり直親の姿を重ねているようです。可愛らしいですが、直虎の心中を考えると、少し切なくなります。
一方、一足早く宴の席を立っていた政次の元に、義妹・なつ(山口沙弥加さん)が慌ててやってきます。井伊の近隣の領主・近藤康用(橋本じゅんさん)が訪ねてきたというのです。まさか、龍雲丸らが何か関係しているのでしょうか?
次回は?
ここまで「おんな城主直虎」第22回のあらすじと感想をお伝えしました。
近藤領内にある寺の本尊が盗まれてしまい、近藤はその疑いの目を再び井伊へ向けていました。
盗賊団の身柄の引渡しを迫られた直虎は、龍雲丸たちを逃がす企てをするようです。
果たして本尊は本当に彼らが盗んでしまったのでしょうか。そして直虎は龍雲丸たちを守ることができるのでしょうか?またしても一難去ってまた一難の展開に、来週も楽しみです。