毎週日曜日20時からNHK総合(18時からBSプレミアム)他にて、放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」。

2017年5月28日、第21話が放送されました。

その副題は、「ぬしの名は」。否が応でも、昨年公開され社会現象にまでなったあの大ヒットアニメ映画を髣髴とさせるタイトルに、早くもSNSなどでは話題になっていました。

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前回20話で持ち上がった隠し子騒動にもひと段落着き、井伊谷で出来上がった木綿を売るべく、商人・瀬戸方久(ムロツヨシさん)らと共に、浜名湖に面する商人の町・気賀を訪れた井伊直虎(柴咲コウさん)。

ところが気賀には、井伊で捕えられながらも逃走した盗人の男(柳楽優弥さん)もいて・・・。

それでは、第21話のあらすじと感想です。

3度目の再会は、誘拐!

気賀を取り仕切る商人・中村与太夫(本田博太郎さん)と会い、木綿を売る算段を付けた直虎。

その後、物珍しい品物が揃う気賀の町を見て回っていたのですが、ひとりの少年とぶつかった直後、懐に入れていたはずの銭入れ(財布)がないことに気づきます。少年にすられていたのです。

そう分かるや否や、直虎は少年を追いかけ始めました。ところが、その途中で逆に少年の仲間と見られる男に気絶させられ、誘拐されてしまいます。連れ込まれた先は何やら騒々しいアジトのような場所。

と、目が覚めた直虎の前に現れたのはまさしくあの盗人の男。彼こそが、このアジトを仕切る盗賊団の「頭(かしら)」でした。驚きながらもここから逃がすよう噛み付く直虎に、「振舞いに気をつけたほうがいい。井伊では当主様かもしれないが、ここではただのおなご」と遠まわしに脅し、去ってしまいました。

まさに一大事。当主である直虎が誘拐されてしまいました。

しかも相手は何の因果か、一度は井伊で捕らえながらも、まんまと逃げられたあの盗人率いる盗賊団。直虎と男の3度目の運命の再会でもあるのですが、なかなか物騒でありがたくない再会です。

盗賊団の一人が「直虎を口封じに殺してはどうか」とか、当の頭の男は「殺すのも気分が良くないから俺の女にするか」とか本気とも冗談ともとれないことを話していると、中村与太夫が人探しをしている、という情報が入ります。

盗賊団からの脅迫状!

一方、スリの少年を追う直虎をまた追いかけながらも、見失ってしまった方久や家臣・奥山六左衛門(田中美央さん)も大慌て。六左衛門が井伊に舞い戻り、直虎行方不明の一報を伝えました。

家臣の中野直之(矢本悠馬さん)、筆頭家老の小野但馬守政次(高橋一生さん)、直虎の母・祐椿尼(財前直見さん)や、前回で井伊家の姫となった高瀬(高橋ひかるさん)らが慌てて一同に介していると、そこへ方久が戻ってきます。彼が持ってきたのは直虎の銭入れと文章が書かれた木の札。何と身代金の要求でした。直虎と引き換えに銭百貫を持って来いと書かれています。

「このようなものに屈しては武士の名折れ」と拒む直之に対し政次は、「銭は用意すると返事をし、受け渡しには人が必ず現れるだろうからそこを捕らえればよいだけ」と至極冷静に告げ、場を治めます。

ここまで観ている方にとっては言うまでもないのかもしれませんが、井伊家の家臣たちは本当に個性派ぞろいで、特にこのような集合しているシーンではひときわそのキャラクターが光るなと私は感じています。

政次は先述の提案をした後に「それしきのこと、何ゆえ思いつかれぬのか不思議でたまりませぬが」とさらりと皮肉を付け加えるのですが、直後の、直之のいかにも癪に障ったような表情。さらにその後の直之の台詞は「(政次は)己の才をひけらかしたかっただけじゃ!」。あまりに可笑しくて、今回全体を通しても名場面に数えてよいものだと思います。矢本さんの爆発するような表現力にやられました。確かに政次ってそういうところがあるよね、なんて同感してしまったのはきっと私だけじゃないと思います。

如何なる時も冷静沈着な策士・政次と、生真面目だけど短気な家臣・直之のバトルは、本作通じて楽しみな要素の一つです。

「領主は大泥棒」・・・直虎救出作戦!

一方アジトでは、直虎が短刀を手に入れて盗賊団一味の少年に突きつけていました。

我をここから出さなければこの子の命はない、と頭を脅迫する直虎。しかし短刀を持つその手は震えていました。それを見逃さなかった頭は「どうぞ」とだけ言って止めません。直虎が刀を持つこと、そしてこのような脅迫ごとに慣れていないのがすぐに分かったのでしょう。

頭は、どうやら人の本質を見抜くことに長けているようです。案の定、少年が隙を着いて逃げ出したことで、再び直虎は捕らえられてしまいます。

「なぜ賊などしている?」と問う直虎に、頭は言います。「あんたに言われたくない。領主なんて泥棒も泥棒、大泥棒じゃねぇか」と。直虎にはその言葉の意味が分かりません。

翌日、身代金受け渡しの時間が迫る中、直虎は、頭にもう一度「泥棒」の意味を問います。すると彼は「あんたは百姓が作ったものを年貢としてせしめている。武家なんて由緒正しき大泥棒だ」と言い放ち、直虎は言葉を失ってしまいます。

直之、六左衛門らが指定された小屋へ向かいますが、そこにいたのは吹き矢で眠らされた直虎だけ。ここで直之は、盗賊団の本当の目的を悟ります。直之ら家臣が乗ってきた馬を盗むことだったのです。幸いその馬も、駆けつけていた龍譚寺の僧侶・傑山(市原隼人さん)によって守られました。どうやら傑山を出すように南渓和尚(小林薫さん)に働きかけたのは政次のようです。和尚から、直虎無事の報せを受けた時の政次の、相変わらずポーカーフェイスながらどこかほっとしたような顔は、見ているこちらもなんとも言えません。

帰還・・・直虎の心に引っかかるあの「言葉」

直虎は無事、井伊へ戻ってきました。しかし乳母のたけ(梅沢昌代さん)には「いつまで姫様の心配をすればよいのか」と泣き付かれ、井伊家に来たばかりの高瀬には「母上は井伊で一番大事な方。母上にはそのお心構えが足りない」と言われてしまう始末で、さすがの直虎も反省しきりです。

そしてこれ以上事を大きくするまいと、直之の反対も押し切り、盗賊団を追わない決断をします。こうして井伊はもとの日常を取り戻しつつありましたが、直虎の心には、頭に言われたあの言葉が残っていました。

「領主なんて泥棒も泥棒、大泥棒じゃねえか」

直虎は、百姓の育ちである高瀬に「武家を泥棒だと思ったことはないか」と尋ねてみました。高瀬は、正直に答えます。自分たちの手で作った食べ物なのに自分たちの口には入らない、これを奪われていると思わない者はいないと思う、と。

祐椿尼も「武家も一緒。武家が戦をして土地を手に入れるのは、戦で功を立てたものに与えるため。どんどん土地を奪っていくしかないのだ」と言います。世の中が奪い合うことでしか立ち行かないことに、直虎は打ちひしがれます。

頭に再接近!直虎の策と想いは届くのか?

方久が、直虎に材木の商いを提案します。あちこちで戦が起こっている今、材木は間違いなく売れるし、盗まれたこともまた需要がある証だというのです。目を輝かせる直虎ですが、井伊には木を切り出すだけの人手はありません。

と、何やら思いついた様子の直虎。何とあの盗賊団を探し出し、彼らを、木を切るための人手としようというのです。方久が中村与太夫に働きかけたことにより、直虎は頭を呼び出すことに成功します。

彼女が頭に真っ先に話したのは、材木のことではなく、幼い時にかぶを盗んだことがある、という告白でした。次郎法師だった時、寺の食事に耐えられずにひもじかったと。「人は武家だろうが百姓だろうが、追い詰められれば盗む。そういうものだ」と語ります。泥棒をしてしまうことに、身分は関係ない。だから自分もお前も「等しく卑しい」のだと。しかしそれでよいのだろうか。するべきなのは、卑しさをむき出しにしなくてもよい世に変えることではないだろうか。話のスケールの大きさに呆気に取られる頭ですが、直虎は言います。「やってみねば分からぬではないか!」。これまでにも何度も彼女の口から出てきた台詞ですね。

そして、材木の話を持ち出します。盗んだ時のように、あっという間に木を切り出すその腕を、もう一度井伊で使ってみる気はないかと。なぜわざわざ自分に頼むのか問う頭に直虎は、「『泥棒』の言葉はそうかもしれないと思ったが、それを認めるわけにはいかない。つまり己のためだ」ときっぱりと答えます。すると、この潔さに何かを感じたのか、頭は話に乗りました。喜ぶ直虎ですが、ここで、まだ頭の名前を知らないことに気づきました。

「頭、名は何と言うのじゃ?」

「龍雲丸だ」

「りゅううん・・・雲の龍か!」

「そちの名」は、龍雲丸。こうして直虎と、「盗人の男」もとい「頭」もとい龍雲丸の不思議な縁が再びつながり、いよいよ始まりを告げたのです。

強力な助っ人と思いきや?

井伊谷に、龍雲丸率いる盗賊団が木を切るためにやってきました。ところが案の定、直之は打ち首にするはずだった盗人、つまり龍雲丸を見つけて直虎に抗議します。いつものように声を荒らげる直之に、とても分かりやすくとぼける直虎は本当に可愛いです。

いよいよ次回から、龍雲丸たちが井伊で動き始めます。紆余曲折あったものの、頼もしい味方を手にしたように見えた直虎ですが、何やら彼らがトラブルを巻き起こしてしまうようです。まさに一難去ってまた一難。またも直虎の、当主としての技量が試されそうです。

そして予告編には直虎が龍雲丸に後ろから抱きすくめられるような、いわゆる「バックハグ」のシーンもあり、何だかドキドキしてしまいました。

次回も見逃せません。

大河ドラマ「おんな城主 直虎」第22回、あらすじと感想とネタバレ。